伊藤洋一氏講演:091202大阪

活力ある地域経済を目指して
〜地域力を日本力に〜住信基礎研究所 主席研究員
伊藤 洋一氏より

 
 以上はほんの一例だが、ITがもたらした変化は個人消費の分野でも顕著になってきた。今年の米国の年末商戦は、サンクスギビングデーの翌日に街に買い物に出かける「ブラックフライデー」の売り上げが伸びず、一方で週明けの月曜日にオフィスのパソコンからネット通販で購入する「サイバーマンデー」が盛り上がった。日本でもネット通販は好調だ。モノの流れがリアルな店舗からネットに移ってきている。
 話は変わるが、江戸時代の商売はご用聞きと配達に代表されるように、いわば売る側の人たちが買う側の人たちの方へ出向いていった。当時は日本の人口がほとんど増えておらず、売る側の努力が求められたわけだ。一方、戦後からこれまでの日本は人口が増加を続け、その中で買い物といえば消費者が百貨店やスーパーなどに足を運ぶかたちが一般的になった。
 だが今後は人口が減少に転じ、江戸時代のように売り手が買い手のところまで出向くという考え方が必要になる。さすがにでっちさんがご用聞きに回るのは人件費が膨らむので、その代役を務めるのがITだろう。
 ITを使えば、都会から離れた場所からでも消費者に直接アクセスできる。また高齢化が進む中、独居老人なども自宅に居ながらにして買い物ができる。これからの時代は、集客を増やすために店舗改装に投資するよりも、ネットの検索で上位に掲載されることの方が消費者の購買意欲刺激に役立つのではないか。
 
 これからの日本は人口減に直面する。江戸時代にヒントを得るとすれば、新たに生み出した地域の名産品を、ITという武器を使って全国の消費者に直接アクセスして売る。そういう新しい形の地域おこしが必要になるだろう。